国内の再生可能エネルギーは高い?
更新日:2021年1月23日
再生可能エネルギー、国内でも普及が進んでいますね。再生可能エネルギーは、地球温暖化対策の切り札であるだけでなく、地域における地産地消のエネルギー源として活用が期待されていますね。地産地消が実現されれば、地域の外で作られたエネルギーを購入する必要がなく、地域での雇用も生まれ得ます。さらには、最近多い激甚災害の際にも、独立したエネルギー源として活用することができ、災害拠点としても期待されています。
皆さんや周りの方々の印象はどのようなものでしょうか。再生可能エネルギー、理念はいいけど、高いよね、安いと言っているのは海外だけでしょう?という方、多くいらっしゃるでしょうか。
様々な専門家が様々なことを言っていて、結局は、再エネ推進派は「再エネは将来安くなる」と言い続け、再エネ懐疑派は、「今は高いし、将来も日本では高い」と言っているだけのような印象も受けてしまう方もいるかもしれません。
原子力推進派は、再エネよりも効率よく、温室効果ガスも出さない、と主張し、火力推進派は、出力を柔軟に変えられる調整力がない原子力や再エネでは電力の安定供給は不可能、と主張する、などの姿が専門家の間でもまま見られます。
実際のところ、どうなのでしょうか?日本における各種電源の発電原価は、政府による公開資料に見られます。各種公開資料から、比較のため作成した図が下記になります。ここでは横軸が発電設備に係る原価、縦軸が燃料に係る原価をとっています。
原子力については、様々な議論がなされていますが、2011年の事故にかかわらず燃料に係る原価はほぼ一定とされています。発電設備については、安全対策費などの計上が必要となり、だんだんと増えていることがわかりますね。
火力発電については、原子力と比べると発電設備に係る原価よりも燃料に係る原価が大きいことがわかります。枯渇性の化石資源の価格に支配されて、今後原価が上昇することが仮定されています。数年前のシェール革命によって、化石資源価格が下がる可能性も想定され得ます。価格のボラティリティ(変動性)が大きいことは事実でしょう。
2012年7月からの固定価格買取制度の施行によって、国内の再生可能エネルギー、特に太陽光の導入が加速度的に進みました。それでも2013年のkWhあたりの原価は36円程度とされ、2017年の実績値で17円強とされています。2020年以降の値は2018年に公表された将来の推定値ですが、2020年以降、急速に原価が低減し、2040年には4円/kWhを切ると展望されています。
これは、再エネ推進派の楽観的願望なのでしょうか?
この記事を書いている2020年現在の原価はどうなっているのかを推測できる公表値には、固定価格買取制度における入札結果があります。太陽光第5回入札(令和元年度下期)の結果は2020年1月に公表されており、最低落札価格は、10.99円/kWh、最高落札価格が13.00円/kWh、加重平均落札価格が12.57円/kWhとなっています。2020 年11 月の太陽光第6回入札(令和2年度上期)の結果では、加重平均落札価格11.48 円/kWhとなっています。原価は価格よりも安いのが常識とみるべきでしょう。上の図中のどこに当てはまるか見てみれば、日本における太陽光の原価は、2018年に想定されていたペースよりも早いペースで下がっていると言えそうですね。
2025年に予定されている万博のころには、太陽光は原子力よりも火力よりも安い電源となっていると期待されます。エネルギーはS+3E(Safety, Energy security, Environment, Economic efficiency)と言われます。安全で、安全保障にも環境性にも優れ、経済的にも安い太陽光を主力エネルギーとして活用するとの視点で、これからのエネルギー需給の在り方を考えていくという時代がまもなくくると期待されますね。
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